日本の文化において、弔事は故人を偲び、ご遺族へ哀悼の意を伝える大切な機会です。その際に用いられる封筒には、贈る側の心遣いや礼儀が表れます。ここでは、弔事用の封筒の正しい選び方と使い方について、場面ごとの例を交えながら詳しくご紹介いたします。

1. 弔事の種類と封筒の選び方
弔事では、宗教や地域によって封筒の表書きや水引の色・結び方が異なります。以下は主な種類です。
仏教
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御霊前:通夜・葬儀(故人が仏になる前)
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御仏前:法要(四十九日以降、成仏された後)
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御香典:宗派を問わず通夜・葬儀に使用可能
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御布施・御膳料・御車代・御塔婆料・御経料:僧侶・寺院への謝礼や供養費用
神道
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御玉串料・御神前・御榊料:神式葬儀や神事への謝礼
キリスト教
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御花料:葬儀における献花の代わりとして贈る金品
その他
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御淋見舞:通夜やご遺族へのお見舞いとして使用。自由な表書きとして、幅広い場面に対応。

2. 封筒の種類と用途(一覧)
表書き | 使用場面 | 内容・意味 |
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御霊前 | 通夜・葬儀 | 故人の霊前に供える金品 |
御仏前 | 法要 | 成仏された故人への供養として |
御香典 | 通夜・葬儀 | 故人への哀悼の意を表して渡す金品 |
御布施 | 葬儀・法要 | 読経や供養の謝礼として僧侶や寺院へ |
御車代 | 葬儀・法要 | 僧侶・来賓への交通費として |
御膳料 | 葬儀・法要 | 会食に代えて僧侶等に渡す謝礼 |
御塔婆料 | 墓前供養・法要 | 塔婆建立の謝礼 |
御経料 | 法要 | 読経をしていただいた謝礼 |
御玉串料 | 神道葬儀・祭典 | 玉串奉奠の謝礼 |
御花料 | キリスト教式葬儀 | 献花の代わりに贈る |
御淋見舞 | 通夜 | ご遺族へのお見舞いや気遣いの気持ちを表す自由表書き |
志 | 香典返し・返礼 | 感謝の意を込め、返礼品と共に渡す |
御礼 | 法要・弔問のお礼 | 弔問や支援への感謝の意 |
寸志 | 会合・式典 | 心ばかりのお礼 |
3. 水引と封筒の選び方
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結び切り(黒白または双銀)
「一度きり」「繰り返したくない」意味を持ち、弔事にふさわしい結び方。
仏教・神道・キリスト教いずれにも用いられる。

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あわじ結び(淡路結び)
引けば引くほど結び目が固くなるため、より格式高い表現として結び切りの代用にも。

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水引の色の違い
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黒白:全国的に一般的な弔事用
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黄白:関西・北陸などの地域で用いられる
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双銀(水引が銀色2本):高額な香典・格式の高い法要などに使用される
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4. 表書きの書き方と連名のマナー
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表書きは薄墨で毛筆または筆ペンを使用
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氏名は表書き下にフルネーム
連名の基本
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2名:右からフルネームで並べます(例:山田太郎 佐藤花子)
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3名:同様に右から年齢・地位の高い順に
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4名以上:封筒には「○○一同」と書き、中袋や別紙に全員の名前を記載
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会社・部署の場合:「○○株式会社一同」または「営業部一同」なども可。中袋に代表者名を書くとより丁寧です。
5. 中袋の書き方とお札の扱い
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表に金額(旧字体)、裏に住所・氏名を記載
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金額の例:壱萬円、参萬円、伍萬円、拾萬円
金額 | 旧字体 |
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1万円 | 壱萬円 |
2万円 | 弐萬円 |
3万円 | 参萬円 |
5万円 | 伍萬円 |
10万円 | 拾萬円 |
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お札は、使い古し(古札)を使用
新札は「準備していた」と見なされるため、避けるのがマナー。
新札しかない場合は一度折って使用します。
6. 封筒サイズの選び方
サイズ | 包む金額の目安 | 用途例 |
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小サイズ(ポチ袋) | ~5千円 | 御霊前・寸志など簡易な贈答 |
中サイズ(標準) | 1~3万円 | 一般的な香典・御布施など |
大サイズ(中金封) | 3万円以上 | 法要や僧侶複数招待時など |
7. ふくさの使い方(持参時のマナー)
お悔やみの封筒を持参する際には、「ふくさ」に包んで持参するのが正しいマナーとされています。ふくさは、封筒が折れたり汚れたりするのを防ぎつつ、贈る心を丁寧に表す日本ならではの礼儀です。
ふくさの色
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慶事用:赤、朱、ピンク、明るい紫など
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弔事用:緑、グレー、暗い紫など
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紫や紺色はどちらにも使用できる「慶弔両用」として便利です。
包み方(左包み)
右→下→上→左の順で折り、左開き

金封ふくさ
近年では、折りたたみ式の「金封ふくさ」が一般的になっています。コンパクトで扱いやすく、ビジネスシーンにも適しています。

8. まとめ:弔意を丁寧に届ける封筒選び
弔事の封筒選びは、単に形式を守るだけでなく、故人とご遺族に対する深い思いやりを形にするものです。
水引の結び方、封筒の種類、ふくさの色、表書きの文字に至るまで、そのひとつひとつが「礼」と「心遣い」を表します。