日本の文化において、お祝いの場は人生の節目を祝う大切な機会です。その際に用いられる封筒には、贈る人の心遣いや礼儀が表れます。ここでは、お祝い用の封筒の選び方について詳しくご紹介いたします。
1. お祝いの種類と封筒の選び方
お祝いにはさまざまな種類があります。結婚、出産、入学、卒業、新築など、それぞれの場面に適した封筒を選ぶことが大切です。
結婚祝い
一度きりのお祝いであるため、紅白または金銀の「結び切り」の水引がついた封筒を選びます。表書きは「寿」や「御結婚御祝」などが一般的です。
出産祝い
何度あっても喜ばしいお祝いであるため、紅白の「蝶結び」の水引がついた封筒を選びます。表書きは「御出産御祝」や「御祝」などが適しています。
入学・卒業祝い
こちらも「蝶結び」の水引がついた封筒を選びます。表書きは「御入学御祝」や「御卒業御祝」などが一般的です。
新築祝い
新しい門出を祝うお祝いであるため、「蝶結び」の水引がついた封筒を選びます。表書きは「御新築御祝」や「御祝」などが適しています。
その他のお祝い関連封筒
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御車代
慶事における来賓への交通費として、感謝の気持ちを込めてお渡しします。 -
御祝
出産、長寿、新築、昇進など、何度あっても良いお祝いごとの贈り物に添えてお渡しします。 -
御礼
お祝いや日常のご厚意に対する感謝の気持ちを込めてお渡しします。 -
お見舞
病気や災害に遭われた方への励ましとお見舞いの気持ちを込めてお渡しします。 -
御餞別
転勤・退職・卒業など門出に際し、感謝と応援の気持ちを込めてお渡しします。 -
初穂料
ご祈祷や神事に際し、神職への感謝の気持ちを込めてお渡しします。 -
寸志
ご尽力いただいた方への心ばかりのお礼として、式典や会合時にお渡しします。
2. 封筒のデザインと素材
お祝い用の封筒は、華やかで明るいデザインが好まれます。金箔や銀箔が施されたもの、和紙を使用したものなど、さまざまな種類があります。贈る相手やお祝いの内容に合わせて、適切なデザインと素材を選びましょう。
水引の種類
結び切り
一度結ぶとほどけない、しっかりとした結び方。
結婚祝い、快気祝い、弔事など「二度と繰り返したくないこと」に使います。「これっきりで終わる」「一度きりで良い」という願いが込められています。特に結婚祝いでは「一生に一度の門出」を祝う意味として用います。
あわじ結び(あわび結び)
結婚祝いをはじめ、弔事などでも用いられる、格式の高い水引。
「縁が長く続く」こと、「強い絆」を象徴しています。結び目が固く、簡単にほどけないため「固い絆」や「永続」を表すとされます。現在では結び切りの一種として扱われることも多いです。
蝶結び(花結び)
リボンのように、簡単にほどけて何度でも結び直せる柔らかい結び方。
形が蝶のように見える「蝶結び」です。「花結び」とも言われています。「何度でも結び直せる」という特長から、合格祝いや入学祝い、出産祝いなど、「何度繰り返しても良い」お祝いに適しています。ただし、結婚式、弔事、お見舞いの場合は「不幸を繰り返す」という意味になるので不適切です。
3. 表書きの書き方
表書きは、毛筆や筆ペンを使用して、濃い墨で丁寧に書きます。名前は表書きの下にフルネームで記載し、連名の場合は右から順に書きます。会社名や肩書きを記載する場合は、名前の上に小さく書き添えます。
連名で贈る場合のルール
結婚式や慶事では、複数人でご祝儀をまとめて贈る場面もあります。その場合、封筒の表書きの記名ルールを正しく守ることが大切です。
夫婦連名の場合
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中央に夫のフルネーム、左横に妻の名前(名字省略)を記載します。
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例:田中太郎 花子
3名までの連名
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中央に右から順に、地位や年齢の高い順で記載します。
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横に並べ、文字の大きさはそろえるようにしましょう。
4名以上の場合
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表には「○○一同」などと書き、中袋や別紙に全員の氏名を記入します。
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例:代表者名+「他○名」または「○○部一同」など。
※ビジネスシーンでは、会社名・部署名の記載も可能です。その場合も個人名の記載ルールを確認しましょう。
4. 中袋の書き方とお札の入れ方
中袋がある場合は、表に金額を旧漢字で記載し、裏に住所と氏名を記載します。お札は新札を用意し、肖像画が表側の上になるように封筒に入れます。
旧字体での金額の書き方
金額 |
旧字体 |
1万円 | 壱萬円 |
2万円 | 弐萬円 |
3万円 | 参萬円 |
5万円 | 伍萬円 |
10万円 | 拾萬円 |
5. 金額の目安
お祝いの金額は、贈る相手との関係性や地域の習慣によって異なります。地域や家庭の習慣によって異なる場合があるため、事前に確認することが大切です。
結婚式のご祝儀

親族の場合
兄弟姉妹 | 5万円 |
おじ・おば | 5万円~10万円 |
いとこ | 3万円 |
その他の親戚 | 3万円 |
友人の場合
相手が友人の場合、ご祝儀の相場は3万円程度です。
仕事関係者の場合
勤務先の場合、結婚式のご祝儀は3万円程度が相場です。上司であるなど職位が上がるにつれて、5万円など相場よりも高めの金額をご祝儀として包むこともあります。
夫婦で出席する場合のご祝儀の相場
夫婦で結婚式に招待された場合は、1名分のご祝儀×2倍の金額が相場となります。
ただし、6万円は偶数で割り切れることから結婚式では縁起が悪いとされているため、奇数である5万円にするケースが多いです。
※注意点 子供を連れて結婚式に出席する場合は、年齢や食事を考慮して5000円~2万円程度を上記に加算します。
6.封筒の大きさ・サイズの選び方
ご祝儀袋には複数のサイズがあり、包む金額や用途に応じて選ぶのがマナーです。
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小サイズ(ポチ袋・小金封)
金額目安(1万円以下)や寸志、御礼、御見舞などに使用。可愛らしいデザインも多く、カジュアルな贈答に適します。 -
中サイズ(一般的な祝儀袋)
1万円~3万円程度に適した最も一般的なサイズ。入学祝、出産祝、結婚祝など、幅広く使えます。 -
大サイズ(中金封・高額対応)
3万円以上を包む際や、格式を求められる場合に選ばれます。厚みのある封筒で、紙質や装飾も豪華なものが多いです。
封筒のサイズ選びに迷ったときは、包む金額+贈る場面の格式感で判断するのが基本です。金額に対して封筒が簡素すぎると印象が悪くなる場合もあるため注意しましょう。
7.ご祝儀袋の包み方(ふくさの使い方)
ご祝儀袋を持参する際には、「ふくさ」に包んで持参するのが正しいマナーとされています。ふくさは、封筒が折れたり汚れたりするのを防ぎつつ、贈る心を丁寧に表す日本ならではの礼儀です。
ふくさの色
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慶事用:赤、朱、ピンク、明るい紫など
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弔事用:緑、グレー、暗い紫など
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※紫や紺色はどちらにも使用できる「慶弔両用」として便利です。
包み方(右包み)
封筒を中央に置き、左→上→下→右の順に包みます。慶事では右開きになるようにします。

金封ふくさ
近年では、折りたたみ式の「金封ふくさ」が一般的になっています。コンパクトで扱いやすく、ビジネスシーンにも適しています。
8.. まとめ:お祝い封筒で伝える心づかい
お祝いの封筒選びは、単なる形式ではなく、相手に対する思いやりや礼儀を伝える大切な手段です。特に日本の冠婚葬祭では、封筒の種類や水引の結び方、表書きの書き方ひとつにまで意味が込められています。
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封筒の種類は、「一度きり」の祝い事には結び切り、「何度あっても良い」祝い事には蝶結びを。
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表書きは濃墨で丁寧に。名前はフルネーム、場合に応じて肩書きも添えて。
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金額の書き方やお札の入れ方にも決まりがあり、新札を用意して礼節を尽くすことが大切です。
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金額の設定は、地域の慣習や相手との関係を考慮して決めましょう。
適切な封筒を選び、丁寧に準備することで、相手に喜んでもらえる贈り物となります。